DNAって何?の映像について

 

おそらく対外的には私のキャリアを支えている作品が、講談社のブルーバックスから発売されている「見てわかるDNAのしくみ」です。これは、私が生命誌研究館で手がけた一連のDNAの映像作品で、パート1が構造と転写・翻訳(1999.5)、パート2がDNAの複製と細胞分裂(2002.3)、パート3がDNAの組み換えと減数分裂(2003.3)という5年間もかけた超大作です(笑)。
パート1ができる前が一番大変でした。98年から制作を開始したのですが、当時はまだCGがあまり手軽な技術ではなかったこと、私が創りたいと思うイメージが世の中にないものだったので、さっぱり伝わらなかったのです。パート2とパート3はすでにパート1を見てもらえれば、私が作りたいイメージが分かるので、よりよくする工夫を制作のプロが手伝ってくれて中身に集中できました。
パート1は絵コンテを描いてくれた川村りらさん(なぜか彼女は最近ロカルノ映画祭で最優秀女優賞に!)との出会いがあればこその作品です。彼女の絵コンテ制作のためにモールと紙粘土で説明をするというやり方が出来上がりましたし、なにより彼女の描くDNAの世界はなんとも魅力的なのです。まだまだひよっこだった私はこれが動くとどうなるんだろう?とわくわくして待っていたわけですが、納期も差し迫った3月、絵コンテの意味ないじゃん!という恐ろしいCGを見せられ愕然。そこで実はひ孫うけまで仕事がふられていたことを把握。その後はすべてを飛ばして直接ひ孫うけだったSolid Design Lab.の松木洋さんとやり取りしてなんとか完成までこぎつけました。学習した私はパート2とパート3は直接松木さんとやり取りしたことは言うまでもありません。社会勉強ですな。しかも、中村桂子先生からもナレーションをいれる大詰めでさじを投げられ、号泣し抵抗したことも懐かしい思い出です。出来上がった作品について文章を書いてそれを中村先生にチェックしてもらう時に、ようやく私の映像の意図を理解して頂けたようで、無事パート2に着手できました。頭の中のイメージは、それが見たこともないようなものだと、それぐらい伝わらないんだとこれまた勉強になりました。
パート2はDNAの複製を世界で始めて動画にするということに挑戦しました。山のような論文をよみ、紙粘土模型をもって多くの研究者のもとに取材に行きました。パート1を作る過程で、既存のデータを組み合わせるとこうなってないとおかしいということなどが見えてきます。そういうことを研究者にとうても、はぁ?と言われるだけで、悔しいと思っていたのですが、それが後に仮説として論文で言われるようになったりしたのです。ということは、、とパート2では意識し仮説提示できるようにと仕事を進めました。やっぱり研究者と戦うのは無理でしたが(笑)、当時の複製のトップサイエンティストのところに仮説説明のCGをつくり、それを元に議論に行こうとしたことはこれまた良い思い出です。結局そんなエネルギーは作品制作の大詰めでどうでも良くなりましたが。実はこの仕事の納期だった2月から3月の記憶がまったくありません。記憶が飛ぶほど仕事したのは初めてです(笑)。
パート3は、映像としてのパッケージというか、物語づくりに力点をおきました。というのもCGで仮説を立てるほどデータがなく、描くことに意味があるのか?という感じだったからです。私自身も大学で習ったときに理解しているとは言いがたく、製作の過程でホリデイ構造をようやく理解しました!そして減数分裂は染色体の組み合わせでできる多様性と組み換えによる染色体内の多様性があるというのも製作過程でなるほどねとしっかり理解したのでした。
この映像で松木さんは製作過程のCGを使って個展を開いてくださり、ポスターやポストカードなどのグッズができたこともとてもうれしかったです。

と思い入れの多い作品なのでした。すでにデータが古いので作り直したいのですが、予算が(笑)

2016年08月28日